大学教授に聞く

今回は安部先生に聞く
最近、よく話題に上がる「落ち着きがない子ども」「キレやすい子ども」などが増えている原因の一つに、食生活の乱れがあると言われています。〝飽食の時代〟と言われるほど食が豊かになった今、いったい何が起こっているのでしょうか? 西南女学院大学の安部一紀(あべかずのり)教授に「子どもの食環境と心身の健康の関係性」についてお話を伺いました。

急速に変化している子どもの食環境

「食」という字は「人を良くする」と書くように、食は心身の健康な人間を育てるための基本です。ところが今、日本の子どもたちは、偏食・肥満・味覚障害・アレルギー症など、食に関してさまざまな問題を抱えています。

その原因を考えてみると、キーワードとなるのが子どものライフスタイルと環境の変化です。核家族化、両親の共働き、加工食品や外食産業の増加など、家庭内の食卓事情は大きく変わってきました。そうした中、「作るのが簡単だから」「子どもがよく食べるから」と加工食品やファストフードまかせの家庭が増えています。家事や仕事忙しいと、ある程度はやむを得ないのかもしれませんが、それが日常化してしまうと確実に、子どもの心身の発達や状態に大きな影響を及ぼすことを忘れてはなりません。

戦後の日本の食事を振り返ると、昭和40年代くらいから、アメリカ式に料理を一皿に盛り付けるようになりました。以前は、お茶碗・汁物・おかず用とさまざまな器があったのに、いつのまにか食器の数が減り、大皿に大きなハンバーグを載せ、あとは人参やじゃがいも、彩りにひとかけらのブロッコリーを添えたりしています。これでは、栄養バランス的には確実に肥満へと向かい、高血圧や糖尿病など、成人病の予備軍になることは言うまでもありません。食卓に並ぶ料理の種類や家族各人用の皿数が増えるほど、栄養のバランスは良くなるのです。

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朝食抜き、孤食、加工食品・・・子どもの食生活の現状

ある調査で、中学生が朝食をとったかどうかを調べたところ、1~2割が朝食を抜いていました。その背景には、就寝時間や朝食の時間が不規則だったりと、彼らのライフスタイルが深く関係していると思われます。そして、朝食をとった子どものほうが、体力や運動能力において良い結果が出ており、中学生の身体づくりに朝の食事が大きな影響を及ぼしていることが明らかにされています。

■中学生のライフスタイルの一例

朝食抜き、孤食、加工食品・・・子どもの食生活の現状

また、塾に通って帰宅する時間が遅くなるなど、子どものライフスタイルが変わってきたことで、食事時間にリズムがなくなり、「お腹が空いたから食べたい」と本能的に感じても食事をとることがむずかしくなりました。さらに、家族の団らんを伴った食卓が失われ、ひとりで食べる「孤食型」、同じものばかりを食べる「固食型」、あるいは「外食型・外注型」といった食事のとり方も増えています。

食育の第一歩は、家族みんなで一緒に食卓を囲むことです。子どもは、親と一緒に食事をすることで、「いただきます」「ごちそうさま」といった食事の挨拶やお箸の正しい握り方など、食事のルールを学びます。また、家族がおいしそうに食べる姿を見ることで、「自分も食べてみよう」と真似をして、好き嫌いや食べ残しも少なくなるでしょう。たとえ、子どもが好き嫌いをしても「あまり気にせず」「ゆったり」と、食卓では楽しい会話を楽しみましょう。そうすれば、子どもは自然と親を真似るようになります。だからこそ、親はいつでも子どものお手本となるように、日頃からいい習慣を身につけておかなければならないのです。

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