大学教授に聞く

「食べ物」と「食べること」を生活の真ん中に

家族団らん

食べるということは、物と物のやりとりではありません。生命と生命、心と心のやりとりです。そして、人と人とのコミュニケーションの最も基本的な形式でもあります。たとえば、お母さんと子どもの間のコミュニケーションも、母乳を飲むことから始まります。赤ちゃんは、お母さんの腕の中でぬくもりを感じ、お乳をもらう幸せを味わうことで、お母さんへの愛情や信頼感を深めていくのです。

このことは、子どもがいくつになっても変わりません。信頼する家族と楽しく会話し、「今日もおいしいね。ありがとう」と感謝しながら食事をする。つまり、子どもにとって「ごちそう=豪華な料理」ではなく、愛情たっぷりの手料理と家族一緒の食卓が何よりの「ごちそう」になるのです。

いつでも、どこでも、何でも自由に手に入る世の中になり、私たちは便利さを手に入れた一方で、大切なものを忘れているように思えてなりません。幼い頃に覚えた味や食習慣が、その後の食生活に大きな影響を及ぼすと言われています。親はその責任の重大さをしっかり認識し、生きる基本である「食べ物」や「食べること」を大切なこととして生活の中心に据えていけば、親自身のライフスタイルや環境が変わり、子どもたちの心身も健やかに育まれていくことになると私は確信しています。

安部一紀

西南女学院大学 保健福祉学部栄養学科 教授
農学博士
NGOネパール歯科医療協力会会長
1961年九州大学農学部卒業。69年福岡女学院短期大学家政科講師、71年同大学助教授就任。同年8月から74年3月まで米・コーネル大学医学部筋肉病研究所へ留学。同年4月より、西南女学院短期大学食物栄養科助教授。76年4月より同大学教授に就任。79年に米・コネチカット大学医学部、81年に米・農務省ベルツビル研究所での留学を経験。95年4月より西南女学院大学保健福祉学部栄養学科教授就任。