大学教授に聞く

今回は三成先生に聞く
平成17年に「食育基本法」が制定されて以来、国をあげて推進している「食育」について、35年も前から取り組んできた中村学園大学栄養科学部の三成由美教授。今回は健全な食生活についての研究を進めている中村学園大学大学院栄養科学研究科の内山文昭教授と、産業医科大学健康予防食科学研究室の徳井教孝教授もお迎えして、日本の伝統食をベースにした「日本型薬膳」について伺いました。

「食育」──周知から実践へ

「食育基本法」の制定から6年、「食育」という言葉がやっと一般に広く知られるようになりました。これからは、食育を実践していく時代に入ったと言えるでしょう。食育推進における施策は次の3つに分けられます。①生涯にわたるライフステージに応じた食育、②生活習慣病の予防及び改善につながる食育、③家庭における共食を通じた子どもへの食育。その中でも、私どもはとくに「②生活習慣病の予防と改善」に注目し、国民の健康維持・増進や生活習慣病の予防という観点から、日本の伝統食と中国医学の薬膳、そして1950年頃の南イタリアの地産地消にこだわった地中海料理を融合させた一汁三菜の「日本型薬膳」を健康モデル食として推進しています。

現在、栄養バランスの良い理想的な食事として世界的に注目されている日本の伝統食ですが、現実には「塩分が多い」、「カルシウムが足りない」、といった懸念があることは否めません。そこで、一汁三菜のお膳文化を基本にして、風土、季節、個人の体質に合った食材を選んで組み合わせるという薬膳の考え方と、個々人の体の健康状態を考慮してのイタリアの修道院の方々が食べている食事様式を取り入れて、季節の地域食材を使った食事「日本型薬膳」を開発したのです。

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「五味・五色・五法」をバランス良く取り入れて

一汁三菜のお膳文化というのは、室町時代に新たな食文化としてかたちになり、お膳の中にご飯・汁・主菜・副菜・副副菜の食器を組み込んだ形態です。私どもがこれまで長期にわたって食生活調査を行い家庭料理の構造を分析した結果、一汁三菜献立の平均エネルギーは約650kcal(※)でした。つまり、一汁三菜が揃った食事をしっかり摂れば、成人女性の1食分にほぼ適したエネルギーが確保できることがわかりました。

さらに、古代中国から伝えられたおいしさの本質である「五味・五色・五法」を基本にして旬の食材を使って作れば、栄養バランスのとれたおいしく健康的な食事になります。五味とは「甘味・酸味・塩味・苦味・辛味」の味つけ、五色とは「白・黄・赤・青・黒(紫)」の彩り、五法とは「生物・煮物・焼き物・蒸し物・揚げ物」という調理法のことです。旬の食材は味や香りが豊かで、生のままや薄い味つけでもおいしくいただけます。さらに酸味や旨味を活かせば塩分カットにつながり、煮たり焼いたりと調理法を工夫することで食材のいろいろなおいしさを味わうことができます。加えて、一汁三菜献立のご飯や味噌汁、副菜の野菜料理によって食物繊維も豊富にとることができます。

(※)参考:厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2010年版)」では、成人女性の身体活動レベルⅡ(例:座位中心の仕事、買物、家事、軽いスポーツなど)において必要なエネルギーは1日約2000kcal。

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